主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

going forward はかっこいい?

 

 どの国の言葉にも流行はあり、さらに同じ国の言葉でも特定の集団(若者とかIT業界とかビジネス文書とか)だけの流行もあります。

 さて、ビジネス関係の英語で、流行と言うと大げさながら最近よく見るな、という表現の一つが"going forward"。これはたんに「今後」とか「この先」という意味で、

 

This will support business strategies going forward.

 

なんて使い方をされます。このように文末、または文頭に来ることが多い気がします。

 

 "from now" とか "in the future" とか言うよりも、ピシッと引き締まってかっこいいような感じがします。威勢がいいというか歯切れがいいというか。

 また、近い将来なのかうんと先なのか、指している期間は長いのか短いのかといったニュアンスがまったくない曖昧な表現なので、言質をとられたくないビジネス用語として便利なのかもしれません。 ビジネスだけでなく政府文書にも多用されています。

 

 ただし、流行の表現につきものですが、多用しすぎると鼻につくかもしれませんね。批判的に見られることもあるようです。ネット上では、(助動詞や未来形があるのに)「不必要で冗長な表現」という批判もみかけました。

 以前翻訳した薄い本を検索してみたら、この著者は一冊で10回も"going forward"を使っていました。

 わかっていても、ついつい使ってしまうのが流行言葉なんですよね・・・・