主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

alignedは「右向け、右!」

 例えば「料理する」という言葉は、文字通りごはんを作るという意味もあるけれど、そこから発展して「物事を処理する」という抽象的な意味を持つこともありますよね。

 あいつをどう料理してやろうか・・・など。

 

 英語にも、具体的な本来の意味から発展した、象徴的な意味で多用されることの多い言葉があります。ビジネス関係でよく使われるけど日本語訳が難しいのが"aligned"。

 

how to align employee with the strategy

well-aligned strategy

employee alignment

 

 本来は何かに沿ってきっちり並べること、「整列」とか「位置合わせ」を行うという意味ですが、これが組織の文脈で使われると、みんなが一致団結して同じ目的を共有しているような、マネジメントにとって理想的な状態を指すわけです。

 私は小学校の運動会で「右向け、右!」と言われて全員がピシっと一方を向くイメージが頭に浮かびます。

 といっても全体主義的なネガティブなニュアンスではなく、まとまっている、とかモチベーションが高い、とか前向きのイメージがある言葉です。

 また、aligne with your customer とくれば、「顧客と同じ目線を持つ」という意味になります。

 

 守備範囲の広い言葉で、エンジニアの文脈では「位置や向きを調整する」という意味になるし、出版やデザインの世界では「行揃え」。政治的な文脈でも「手を結ぶ」「提携する」という意味でよく使われます。東西冷戦時の非同盟運動は"Non Aligned Movement"でした。

 

 私は団体行動が苦手なので、なんとなく好きになれない言葉なんですけどね・・・・