主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

corner officeは、偉い人の象徴

 偉い人を暗示するアイコンは、けっこういろいろあります。

 「マホガニー製のデスク」「メルセデスベンツ」「葉巻」「秘書」「プライベートジェット」「肖像画」「銅像」などなど、いずれも世界共通のイメージがあると思います(私は偉い人に縁がないのでイメージが貧困ですが・・・)。

 

 さて、英文では偉い人を暗示するのによく使われるのに、日本語では対応する言葉がないのが"corner office"です。

 これは文字通り、建物の角にあり、壁の二方面から下界を見渡せる部屋。組織の幹部クラスやトップに割り当てられるものとされています。眺めがいいから、偉い人が居座っているということでしょう。

 

get a corner office without an MBA

corner-office executives

 

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wikipediaの"corner office"より借用)

 

 さて、意味が分かっても、これに対応する日本語がありません。「角部屋」「角の事務室」では、「偉い人」の暗示になりません。住居で「角部屋」は高級イメージがありますが、オフィスでそのイメージは日本では皆無だと思います。

 なのでこれは「重役室」「役員室」と、一種の意訳をせざるを得ません。

 

 同じように、英語(米語)にあって日本語にない象徴的な言葉に、"redneck"があります。

 アメリカ南部の教養のない貧しい白人を馬鹿にした呼び方で、ひどい蔑称ですね。さすがにビジネス文書でお目にかかったことはありませんが、小説ではよく出てきます。

 首の周囲が赤く日焼けしていることから、そう呼ぶのでしょう。

 

 

(追記 2014年10月)

 この言葉を象徴的なタイトルに使った新刊本を見つけました。

Winners Dream: A Journey from Corner Store to Corner Office

Winners Dream: A Journey from Corner Store to Corner Office

 

  この本は、世界的IT企業であるSAPのCEOのサクセスストーリーで、彼は最初はゼロックスの一営業マンだったそうです。出世ぶりを簡潔に表現していますね。