主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

teamを「チーム」と訳して良いのか?

 英語のteamは、日本語化した「チーム」と基本的に同じ意味だと思います。

 しかし、組織の文脈で出てきた場合に「チーム」と訳すと、意味は通じるものの、いかにも不自然な翻訳調になることがあります。

 

Mr.Nagashima and his team did a great job!

「長嶋さんと彼のチームは素晴らしい仕事をした!」

 

 どうでしょう?

 長嶋さんが野球の監督ならばまったく問題はないのですが、彼が法人営業部長だったり、人事課長だったり、警察の捜査一課長だった場合、やはり部や課を「チーム」と呼ぶのは日本の皮膚感覚だと違和感があります。

 日本語の「チーム」というのは、スポーツ・チームを指す印象が非常に強いせいでしょうか。

 なのでここは his teamを「部下たち」と意訳して、

 

「長嶋さんとその部下たちは・・・・」

 

のほうがはるかにすっと読めると思います。もし原文に情報があれば、「長嶋課長とその課員たち」と訳すこともできるでしょう。

 

 この、someone and his/her team という表現はしょっちゅう出てきます。組織で「誰かの」teamといえば、部下という意味と思っていいのではないでしょうか。

 

 以前のエントリ(coworkerとcollegue - 主夫と翻訳) でも触れたのですが、どうも組織の上下関係に関する感覚は日英でだいぶ違うようです。

 また、最近の英語で使われる言葉の傾向として、ピラミッド型で中央集権的な組織を暗示するような言葉はなるべく避け、teamとかcolleagueとか、フラットで分散型の組織をイメージさせるような言葉が好まれているような気がします。