主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

"get traction"は「弾みがつく」

 これもきちんとした辞書には出てない、一種の流行言葉というか、使う人はよく使うし、使わない人はまったく使わない言い回しです。

 

This idea has not got traction yet.

How to get traction with new services

 

 日本語で「トラクション」というと車好きな人の用語という印象で、「タイヤが地面をとらえることで生まれる駆動力」という文脈で使われますね。

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 英語でも「駆動力」「摩擦力」「モノを動かす力」という意味があるようで、そこから転じてビジネスの文脈で

 

弾みがつく

勢いを得る

普及し始める

火が着く

 

なんて意味を持ったようです。

「泥の上でタイヤが空回りして車が動かない状態」の反対のイメージがある表現です。なかなか動かない重くて大がかりな製品・サービスが、やっと動き始めて手応えを感じ始めた状態でしょうか。

 個人的には「弾みがつく」という訳語がしっくりきます。

 

 このように、自動車や飛行機、船など運動する機械が頭に思い浮かぶ表現は豊かにあるように思います。イメージしやすいからでしょうね。

 

drive, driven

handle

navigate

tail spin

take off

launch

 

「ローンチ」などは「製品・サービスの立ち上げ」という意味でそのままカタカナ用語として使われることが増えているように思いますが、「トラクション」というカタカナ用語はビジネス界ではまだまだ"get traction"してないようですね。