主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

自動詞の"argue"はケンカ腰でなく、ただ自分の意見があることを表す

 私だけかもしれませんが、昔から

 

argue = 異議を唱える、反論する

 

という思い込みがありました。ケンカ腰の態度で臨むような・・・

 

 しかし実際に英文を読んでいると、argueが「異議、反論」といったネガティブな意味を持つことは半分もない感じです。

 あとの半分以上は、”argue that 〜”に代表される「主張する、言い張る」という日本語に近い使い方です。

 

 だだ、discussなどの類義語と比べて、

 

「正しいと確信している自分の意見・主張・信念があり、それをあの手この手で示して、相手を説得しよう、自分の正しさを証明しようとする」

 

というようなニュアンスがあるように思います。

 

 客観的というよりも、自分の信念があるから感情も入っているような・・・。とはいえ、必ずしも「相手が間違っている」という否定ではなく、あくまで「自分はこれが正しいと思う」という自己主張にすぎないケースがけっこうあるように思います。

 

 argueに争うような色がつくのは、againstとかwith(お互いに主張し合う→言い争う)とか、前置詞によるものであって、argue自体にその意味は含まれてないみたいです。

 ただし、これは自動詞のargueについては言えるのですが、他動詞のargueには目的語に対して「反論する、問題とする」という意味もあるんですよね。そこがややこしいとこなのですが・・・

 

 最後に、この点がよく分かる英英辞書(COBUILD)の説明を以下に引用します(太字・赤字は筆者)。

 

If you argue for something, you say why you agree with it, in order to persuade people that it is right. If you argue against something, you say why you disagree with it, in order to persuade people that it is wrong.

 

 もし自動詞の"argue"に「反対する」という意味が含まれていたら、"argue for"という言い方はあり得ないはずです。