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主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

"scalable"なビジネスは売上げ急増に耐えられるキャパシティを持つ

最近たまにビジネス関係の文章で目にするキーワードが

 

scalability (名詞)

 

です。

 

形容詞だと scalable

動詞だと scale (目的語をとらない自動詞です)

 

You need to enhance scalability of your business.

 

We have a scalable business model.

 

Campanies that scale are strong.

 

 さて、企業やビジネスに使われるこのscalabilityは、まったく辞書に出てない使われ方です。

 辞書に載っている意味は「拡張性」「規模を大きくできること」「伸縮可能性」「はかり」などで、これがビジネスの文脈だとどういう意味を持つのかいまいちピンときません。

 私なりにいろいろ調べたところ、どうやらこの言葉はIT業界やシステムの世界でポピュラーになり、それがビジネス全般にも使われるようになりだしたみたいです。

 

 システムの世界で"scalable"というのは、利用者数が増えてもシステムが対応できることです。今は100人しか利用者のいないネットワーク・サーバーが、仮に10万人が同時に利用してもパンクしないならscalableです。「拡張性」という訳語で違和感がないと思います。

 これがビジネスや企業の文脈で使われると、「拡張性」では違和感がありますよね。「規模拡大に耐えられる」「急成長の余地がある」といった訳語になるのではないでしょうか。

 より具体的には、「売上げが増加してもコストがあまり増加しないビジネス」をscalableと言うようです。例えばA社の売上げが100万円で、そのためのコストが10万円だったとしましょう。売上げが200万円に倍増してもコストが20万円かかるようでは、この成長はscaleとは言えません。売上げは二倍の200万円になったのにコストが12万円で抑えられた場合、この企業はscaleしたと言えます。一昔前に出井ソニーが流行らせた「収穫逓増モデル」みたいですね。ITの世界ではこのようなscalabilityが比較的容易に達成できるようです。

 

<追加> 後で気付いたのですが、この用法の"scalable"は、"economy of scale"=規模の経済 が語源かもしれませんね。まさに規模の拡大につれて単位あたりのコストが下がることですから。

 

 

 さらに、「市場や売上げの増加を十分に活かしている」というニュアンスもあるようです。日本語でいうと「フル稼働している」という感じでしょうか。

 

 以前に取り上げた”resilience"(resilientは腰のあるうどん? - 主夫と翻訳

)と同じように、今後日本でも流行る言葉かもしれません。ただし「スケール」というカタカナ語はすでに別の意味で使われているので、どんな訳語で定着するのか読めないですね・・・

 

 

 なお、英文ですが以下のサイトがscaleの意味について非常によくまとまっており、参考にしました。


What Does “Scale” Mean in Business? | Leadership Maverick