主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

"functional area"は「部門」と訳すべきです

ビジネスの文脈で普通に出てくる言葉に

 

functional area

 

があります。

 これを機能領域と訳しているケースをけっこう目にしますが、どうなんでしょうか・・・

 

「真に優れた社員はさまざまな機能領域で活躍できる」

 

・・・・いまいちピンときません。

 

 企業やビジネスに関してこの言葉が出てきたら、一番近い日本語は「部署」または「部門」だと思います。

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 もちろん、脳の働きについての文章で"functional area"が出てきたら、それは「機能領域」と訳すべきだと思いますよ。脳に「部門」はないですから。しかしビジネスの文脈では90%は「部門」だと思います。

 辞書にあまりこの訳語が出ていないせいか、どう考えても「部署」「部門」と軽く訳すべきところで「機能領域」というおどろおどろしい言葉が使われているケースが目に付きます。

 

 また、「部署」でも「機能領域」でもない第三の訳語として「職能分野」としているケースも散見します。これはビジネスの文脈でもアリだとは思います。ただし、実際にこの言葉を使うとかなり堅い感じで、なんだか人事部の研修用資料か厚生労働省の公文書みたいに思えます。だって日常的に「職能」なんて使わないでしょ?

 ビジネスの文脈で"functional area"を100%厳密に、誰にもつっこまれないように訳すなら「職能分野」のほうが安全ですが、原文がよほど堅い人事関係の論文でもない限り「部門」でいいと思います。

 

 ちなみに会社の「職能分野」だか「部門」だかの言い回しはだいたい日本語と英語できっちり一対一に対応してます。「肩書き」は日英でバラバラなので苦労するのと対照的です。

 

営業(販売)  =  sales

営業(マーケティング)  =  marketing

人事  =  HR, human resources

研究開発  =  R&D

製造   =  production (operation)

事務   =  administration (admin)

経理   =  accounting, accounts

財務   =  finance

法務   =  legal

顧客担当  =  customer services(relations), account management

広報  =  PR, communication

広報(広告) = advertising

システム   = IT

 

(*) "human resources"は「人的資源」という意味で使われることもありますが、会社組織の話で出てきたら「人事部」です。また、"account management"はまぎらわしくも「口座管理」という意味もありますが、主に法人のお客さんのフォローをする仕事もこの言い方です。

  

 実はこの"functional area"も、以前触れた言葉("packaged goods"は写真で一目瞭然 - 主夫と翻訳)と同じく、グーグルで画像検索するとイメージがつかみやすい言葉です 。興味があればお試しあれ。