主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

助動詞に近い"help"はいちいち「助ける」と訳さない?

helpという動詞には特殊な用法があり、まるで助動詞のように使われることがあるようです。

 

もちろん

Help me!

のhelpは単純に「助ける」という動詞なのですが、次の例はどうでしょう?

 

You should help others understand yourself.

to help tackle the problem

It will help build a successful company.

 

「他人があなたを理解するのを助ける」

「その問題に取り組むのを助ける」

「成功企業を作り上げるのを助ける」

 

 

と訳して間違いはないのですが、このような<help+動詞>の場合、helpは日本語の「助ける」「手伝う」よりもずいぶん意味の軽い、助動詞のような働きをしていると思うのです。

 つまり上記の日本語訳だと本来の英文より意味が強くなりすぎてしまう可能性があるのですね。

 また、書き手によってはこの「助動詞型help」を多用する人もいるので、いちいち「〜を助ける」「〜に役立つ」と訳出しているとうざったらしくなってしまいます。

 

 しかし、ニュアンスの弱い「助ける」を一語で表す日本語はありません。なので万能の解決法もないのです。

 私はこのようなhelpに出会うと、ケースバイケースで次の方法のいずれかを使っています。

 

1)多少のずれには目をつぶって「助ける」と訳す。(これが一番多いです)

 

2)「一助となる」「役立つ」「手を貸す」など言葉を換えて、「助ける」の羅列にならないようにする。(ごまかし、とも言えますが「助ける」を何度も繰り返すよりマシです)

 

3)helpを無視して日本語訳に反映しない。(かなり勇気の要る特例です)

 

4)「させる」「させてあげる」など、ニュアンスの近い表現にかえる。(これが理想なのですが、「させる」と訳せるケースは少ないです)

 

 いちいち悩ましいので、helpを多用する著者の場合「助けてくれ!」と叫びたくなります・・・・