主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

"invest"は「投資する」とは限らない

 以前、"identify"を例外なく「特定」と訳すのはおかしいと書きましたが(identifyを特定する - 主夫と翻訳)、同じように"invest"を何が何でも「投資」と訳している例をけっこう目にします。これも無理があります。

 

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 日本語の「投資」はお金に密着したイメージがあるのに対し、英語のinvestはお金と関係ないことにも使うからです。言葉の守備範囲が日英でズレているのです。

 

I invested my time in learning English.

 

Do not invest in those people who have no big dream. 

 

 とりわけこの言葉は「時間やエネルギーを割く」というニュアンスが強いように思います。

 無駄なことに「費やす」のではなく、見返りや成果が期待できることに「自分の力などを注ぎ込む」という感じでしょうか。訳語は「割く」「注ぎ込む」「投じる」などになるでしょう。

 もちろん、名詞形でも同じです。

 

What do you think is the best investment of your time?

(自分の時間を何のために使うのが一番いいと思いますか?)

 

 ちなみに英英辞書のコウビルドでは以下のように説明されています。

If you invest time or energy in something, you spend a lot of time or energy on something that you consider to be useful or likely to be successful.