主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

"the art and science"は「教養課程」ではなく「理論と実践」

いわば定型句のような使い方で

 

the art and science of ◯◯◯

 

という表現をよく目にします。

(順序が逆で"the science and art"もアリ)

 

この場合、scienceは「科学」というよりも「体系化された理論、理屈」であり

artは「芸術」というよりも「理論化できない技、術、勘、職人芸」みたいなものです。

相反する二つをセットにした定型句で、"the" はこの二つをセットにまとめています。

 

この二つをまとめないで

 

Is management an art or science?

Cooking: Art or Science?

 

なんて表現もよく見ます。

「理論」なのか「勘・個人の技」なのか? ということですね。

 

ですから私は、"the"でセットになった"the art and science"の訳としては、多少意訳ながら

「理論と実践」

がぴったりではないかと思います。相反する二つをセットにしてるわけですから。

より厳密に訳せば

「理論と実務」

「理論と技術」

なんてのもありかもしれません。

 

一方、二つをまとめないで複数形にした

arts and science(s)

という表現もあり、これは学問分野としての「人文科学(arts)と自然科学(sciences)」、または「文系と理系」「(まとめて)教養課程」を指すようです。

 

結局、"science"は「体系化された理論」「科学」でぴったりなのですが、「理論化できない職人芸」を意味する"art"のほうはぴったり対応する日本語がないのでややこしくなるのでしょうね