"mind"は「こころ」や「精神」でなく「知性」──なぜなら脳にあるから
mind, heart, soul, spirit
はいずれも「人間のこころ/精神」に関係する言葉ですが、四つも言葉があるのはもちろんそれぞれに指すものが違うからです。
その中で、最も日本語と意味がずれているのが"mind"ではないでしょうか。
"mind"を英和辞書で引くと、
心、精神、知性、感情、意思、気持ち・・・
とズラズラ訳語がでてきます。
要するにこれは一語でピシっと対応する日本語がないことの証左でしょう(一方、ほとんどの場合"soul"は「魂」で一発OKです)。
さて、私は"mind"は基本的に「知性」だと思っています。私が目にする英文では6〜7割方その意味で使われています。
すなわち、"mind"という単語を目にしたら、自動的にまずは「頭を使う知的活動」がイメージされるのです。
その理由は"mind"が脳に存在するからです。
グーグルで"where is the mind"と検索してみてください。英語の"mind"は人間の「脳」(brain)にあることがすぐにわかると思います。
一方、日本語の感覚だと、「こころ」や「感情」は〝脳〟ではなく〝胸〟にあるような気がしませんか?
「胸が痛い」
「胸に響く」
「胸を打つ」
「心臓に悪い」
というように、感情や気持ちはなんとなく「胸」にあるというのが暗黙の前提です。
(「頭にくる」という表現もあるので、線引きはそれほど厳密ではなさそうですが・・・)
つまり日本語では、感情は胸(心臓)、知性は頭(脳)にある一方、英語では頭に存在するmindが知性と感情の両方を司ることができるようなのです。ただ、mindときたらまずは「知性」のほうを最初に思い浮かべるほうが結果的に正しい理解に結びつく確率が高いと思います。
ちなみに、簡潔な表記が特徴(だと私は思っている)のCOBUILD英英辞書で"mind"を引くと、語義(小見出し)がなんと45項目もあります。英語でもそれだけややこしい言葉なんですね・・・