スラングの"hack"は「難題にうまく対処するコツ」
シリコンバレーの著名人のインタビューを訳していたら
how to hack the challenge
they know a lot of hacks
といった表現をしていました。
一つ目は動詞、二つ目は名詞ですね。
"hack"はもともと
「斧でたたき切る」
「切り刻んで台無しにする」
なんて意味でしたが、コンピュータ用語として
「プログラムや機械を改造する」
「システムに不法侵入する」
という意味のほうが圧倒的に多く目にするようになりました。
「ハッキング」や「ハッカー」は日本語化したと言ってもいいでしょう。
この言葉はそこからさらに一歩進化して
「難しいことを巧みに解決する(方法)」
という使い方をされるようになっているみたいです。
日本語でも「ライフハック」なんて言葉をネットでよく見かけますね。
こんな新しい定義はもちろん紙の辞書には出ていませんが、オンラインの辞書には出ています。
例えば
a clever solution to a tricky problem
(Slang) To cope with successfully; manage
などと定義されてます。
日本語で一番近い言葉は「コツ」ではないでしょうか。
このようにネットやコンピュータ関係の言葉はやはり進化が早く、新しい意味がすぐに生まれるようですね。
"the art and science"は「教養課程」ではなく「理論と実践」
いわば定型句のような使い方で
the art and science of ◯◯◯
という表現をよく目にします。
(順序が逆で"the science and art"もアリ)
この場合、scienceは「科学」というよりも「体系化された理論、理屈」であり
artは「芸術」というよりも「理論化できない技、術、勘、職人芸」みたいなものです。
相反する二つをセットにした定型句で、"the" はこの二つをセットにまとめています。
この二つをまとめないで
Is management an art or science?
Cooking: Art or Science?
なんて表現もよく見ます。
「理論」なのか「勘・個人の技」なのか? ということですね。
ですから私は、"the"でセットになった"the art and science"の訳としては、多少意訳ながら
「理論と実践」
がぴったりではないかと思います。相反する二つをセットにしてるわけですから。
より厳密に訳せば
「理論と実務」
「理論と技術」
なんてのもありかもしれません。
一方、二つをまとめないで複数形にした
arts and science(s)
という表現もあり、これは学問分野としての「人文科学(arts)と自然科学(sciences)」、または「文系と理系」「(まとめて)教養課程」を指すようです。
結局、"science"は「体系化された理論」「科学」でぴったりなのですが、「理論化できない職人芸」を意味する"art"のほうはぴったり対応する日本語がないのでややこしくなるのでしょうね
重力波を観測したぞ!
今日、100年前にアインシュタインが予言した「重力波(gravity waves)」が実際に観測された、というニュースが流れました。
NHKによると
研究チームを率いるカリフォルニア工科大学のデビッド・ライツィー教授は会見の冒頭で「重力波を観測したぞ!」と叫び、喜びを表していました。
宇宙や物理に多少関心のある私は、このニュースを興味深く読んでいたのですが、ふと
「観測したぞ!」というのは英語でどういう動詞を使ったのだろう?
という疑問を持ちました。
find?
observe?
track?
identify?
さっそくABCニュースのホームページで会見の様子を見てみたところ、
"We have DETECTED gravitational waves. We did it !"
と言っていました。(下記リンク先、1分30秒あたりです)
なるほど。そこで"detect"を英英辞書で調べると、「簡単には見つからないものを、特別の方法や道具で見つける」というニュアンスがあるのですね。
ところでNHKの記事には「叫んだ」とありますが、映像を見るとまったく叫んでいません(汗
むしろ興奮を意識的に抑えた口調で、学者らしい冷静さを演出していたように思います。つまらないことですが、やはりなんでもオリジナルに当たることは意味があるな、、、と実感しました。