主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

"onboard"は動詞で使うと「新人を仕事に慣れさせる」の意味

"onboard"という単語は形容詞だと思っていたら

 

onboard someone

 

という表現に出会いました。動詞もあるんですね。

動詞としての"onboard"は、私の持っているどの辞書にも出ていない使い方です。

つまり、(主にビジネスの世界で使われる)新しい使い方みたいです。

 

オンライン辞書にはどれも同じ意味で用法が出ていました。

例えばマクミランでは次のように解説されています(リンクはこちら)。

 

to make a new employee feel part of the company and ensure they have the right skills and knowledge to fulfil their role

<新しく雇った人が会社に慣れ親しめるようにし、また自らの役職をこなせるだけのスキルと知識を身につけさせること>

 

もともとは「一緒の船に乗る」という意味ですから、それが転じて「会社という同じ船の乗組員として一人前にさせる」という動詞になったのでしょうね。

 

転職が日常的に起きるアメリカ社会らしい新用法だと思います。

 

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ちなみに

a new employee

という英語をよく見ますが、これを「新人」と訳すと、ちょっとニュアンスがずれてしまいます。

日本語の「新人」は、学校を出たばかりのフレッシュな若者で無色透明、何の役にも立たない、というイメージがありますが、"a new employee"は、自分の上司かもしれないし、ものすごい仕事ができるかもしれませんので。