主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

ダッシュで逃げるのは悪ガキだけではない

"──"のことです。 最初と最後を"──"で囲んで、追加情報的な文や言葉を挿入します。 Ordinary people ── like you and me ── do not have private jets. わざわざ関係代名詞を使ったり、二つの文に分けたりするほど大げさにしたくない、ちょっとしたついでの…

ドラッカーで有名な上田惇生さんは、effectiveを成果と訳した

ひょんなことから私が翻訳の仕事をすることになった時、まず最初にしたのは、有名な翻訳書の原書と訳本を読み比べてみることでした。 『ビジョナリー・カンパニー』(山岡洋一訳)とか『経営者の条件』(上田惇生訳)などです。 そこでいきなりショックを受…

teamを「チーム」と訳して良いのか?

英語のteamは、日本語化した「チーム」と基本的に同じ意味だと思います。 しかし、組織の文脈で出てきた場合に「チーム」と訳すと、意味は通じるものの、いかにも不自然な翻訳調になることがあります。 Mr.Nagashima and his team did a great job! 「長嶋さ…

feedback を「フィードバック」と訳して良いのか?

もともとの意味は「結果」が「原因」に影響を与えることです。 例えば、運転中にハンドルを切りすぎた結果を見て、あわてて運転者がハンドルを戻すことなんかも「フィードバック」と言えるでしょう。 コンピュータのアルゴリズムの結果を見て、それを頼りに…

skyrocketingは「うなぎ上り」

よく見ますね、これ。 天に向けて真っ直ぐ高速で飛んでいくロケット(花火)のように「急上昇」することです。skyrocketで名詞かつ動詞ですが、skyrocketing ◯◯ と形容詞的に使われることが多いようです。 生き生きして派手な表現なので、新聞・雑誌の見出し…

corner officeは、偉い人の象徴

偉い人を暗示するアイコンは、けっこういろいろあります。 「マホガニー製のデスク」「メルセデスベンツ」「葉巻」「秘書」「プライベートジェット」「肖像画」「銅像」などなど、いずれも世界共通のイメージがあると思います(私は偉い人に縁がないのでイメ…

dimensionにはやっかいな「側面」がある

3D(三次元)の"D"はdimension。元々の意味は「タテ・ヨコ・高さ」を表す「寸法」で、家電などのパンフレットには必ず Product Dimensions 40 x 15 x 20 inches なんて表記があります。ここから発展して、「大きさ」「容量」「重要性」「女性のスリーサイ…

辞書に載っていないmetricsは「評価基準」

ビジネスの文脈で"metrics"という言葉は、たいがい「評価基準」または「指標」という意味で使われるようです。 incentives and metrics to reinforce behavior detailed metrics on performance right metrics to measure those risks ところが、私の手元に…

resilientは腰のあるうどん?

ビジネス関係でよく使われる形容詞に"resilient"があります。 ダメージを受けても素早く回復する能力があることを指し、「強靱な」「弾力性に富む」「回復力のある」「復元力のある」などと訳されますが、どれも言い足りないというか、ニュアンスを日本語に…

over timeは、ゆっくり、のんびり、残業しない

これもよく見る表現に"over time"があります。 「時の経過と共に」「ゆっくりと時間をかけて」「徐々に」といった意味です。instantly とか immediately の反対のイメージですね。 ぴたりと対応する日本語がないので、どうしても訳が間延びしがちです。 grow…

「アナと雪の女王」の歌詞の翻訳はすごい

私の娘もご多分に漏れず「アナと雪の女王」が大好きで、毎日踊りながら歌っています。 さて、この主題歌のサビの部分、"Let it go, let it go…"が、日本語では「ありの〜ままの〜」と訳されていることに、私は軽い違和感を持っていました。 なんでわざわざそ…

alignedは「右向け、右!」

例えば「料理する」という言葉は、文字通りごはんを作るという意味もあるけれど、そこから発展して「物事を処理する」という抽象的な意味を持つこともありますよね。 あいつをどう料理してやろうか・・・など。 英語にも、具体的な本来の意味から発展した、…

identifyを特定する

私は他人様の翻訳をチェックする翻訳チェッカーの仕事もしています。 チェックするなんておこがましいほど上手な人もいれば、これで金をもらっていいのかと言いたくなるほどひどい人もいます。 仮定法を誤って訳していたりと論外のケース(けっして少なくあ…

going forward はかっこいい?

どの国の言葉にも流行はあり、さらに同じ国の言葉でも特定の集団(若者とかIT業界とかビジネス文書とか)だけの流行もあります。 さて、ビジネス関係の英語で、流行と言うと大げさながら最近よく見るな、という表現の一つが"going forward"。これはたんに…

coworkerとcolleague

ビジネス関係の英文でけっこうよく出てくるけど、その度にひっかかる言葉が”colleague”。 これを「同僚」と訳すと違和感がある、というケースが多い。どう考えても書き手より立場が上の人や、書き手と別組織で働いている人を"colleague"と呼んでいる。 ネッ…