主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

2016-01-01から1年間の記事一覧

"a"か"the"か「なし」か──冠詞についての考察(1)

Amazonで「冠詞」と検索すると、冠詞についての参考書や研究書がずらっ〜と登場します。 それだけ日本人にとって「わかりにくく、奥が深い」のが冠詞なのでしょう。 私も翻訳をするようになって、ずいぶん冠詞を意識するようになり、冠詞に悩まされた…

"work out of home"は、自宅で仕事をする「在宅勤務」の意味

私は今まで知らなかったのですが、 work out of (one's) home というのは 「自宅で仕事をする」 という意味の定型表現です。 "out of 〜" には、「〜から外に出る」という意味があるので 「家を出て外で働く」という意味かと間違えそうですし、さらに work o…

"resource"の訳は時には「ヒト・モノ・カネ」でもいい

翻訳者の実力が試される単語、というのがあると思います。 例えば resource はその一つでしょう。 一般的には石油やガスなどの「資源」であり、より広くは水や生物種、さらには「観光資源」などもあります。 コアの意味としては「(国などが所有する)価値を…

"more than"を「以上」とするのは誤訳か?

数の習慣的な扱い方は日英でけっこう違うので面倒くさいです。 例えば 「日本では何歳から大人とみなされますか」 という質問に、日本語なら 「20歳以上です」 と答えるのが自然です。 「大人」の最小年齢を引き合いにだすわけです。 ところが同じ内容を英…

最近よく見る"playbook"は要するに「定石集」かつ「マル秘作戦ノート」

ビジネス分野の英文で最近ひんぱんに見かける言葉に playbook があります。 辞書には 「台本/脚本」 「キャンペーンの計画書」 「アメフトで使う作戦ノート」 などとありますが、どれもしっくりきません。 There is no playbook to tell you what to do. Th…

スラングの"hack"は「難題にうまく対処するコツ」

シリコンバレーの著名人のインタビューを訳していたら how to hack the challenge they know a lot of hacks といった表現をしていました。 一つ目は動詞、二つ目は名詞ですね。 "hack"はもともと 「斧でたたき切る」 「切り刻んで台無しにする」 なんて意味…

"the art and science"は「教養課程」ではなく「理論と実践」

いわば定型句のような使い方で the art and science of ◯◯◯ という表現をよく目にします。 (順序が逆で"the science and art"もアリ) この場合、scienceは「科学」というよりも「体系化された理論、理屈」であり artは「芸術」というよりも「理論化できない…

重力波を観測したぞ!

今日、100年前にアインシュタインが予言した「重力波(gravity waves)」が実際に観測された、というニュースが流れました。 NHKによると 研究チームを率いるカリフォルニア工科大学のデビッド・ライツィー教授は会見の冒頭で「重力波を観測したぞ!」…