主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

辞書に載っていないmetricsは「評価基準」

 ビジネスの文脈で"metrics"という言葉は、たいがい「評価基準」または「指標」という意味で使われるようです。

 

incentives and metrics to reinforce behavior

detailed metrics on performance

right metrics to measure those risks

 

 ところが、私の手元にあるどの辞書にも、この訳語が載っていないんですね。なぜか理由はわかりません。最近になって使われるようになった用法なのでしょうか?

 辞書に載っているのは、(単数形で)「メートル法」「尺度」「基準」などです。しかし私はビジネス関係の英文で数百回はこの"metrics"に出会っていますが、100%近くが、複数形で「評価基準」または何かの「指標」の意味でした。

 

 上記の例文にあるように、performanceとかmeasureとかと一緒に使われることも多いです。人事評価とか給与体系とか企業業績などで多用される言葉だと思います。また、データ分析を背景とした知的に洗練された手法、というニュアンスが感じられることもあります。

 

 言葉は日々変わっているので、こういうこともあるんですね。

 私が学生の頃、"terrific"や"awesome"は、「恐ろしい」とか「ひどい」とかネガティブな意味で習いましたが、今や「すばらしい」というほめ言葉以外で使われる例を見たことがありません。