主夫と翻訳

翻訳をしていると、日本語にするのが悩ましい言葉にたくさん出会います。検索すると、その言葉の訳語に悩んだ先人たちの声がたくさん見つかり、孤独な翻訳作業が少し楽しくなります。そして、自分もそんな言葉を残したくなりました。

"make sure"は「確かめる」では足りない(こともある)

 ひんぱんに使われる言い回しなのに、なんとも日本語に訳しにくいな、といつも思うのが"make sure"です。

 私の感覚で言うと、make sureには大きく二種類あって、一つは「確かめる」「確認する」ですっきり訳せるmake sureです。以下のようなケース。

 

I made sure that the door was locked.

It is important to make sure the food is fresh.

 

 しかし、もう一つのmake sureは「確かめる」よりは意味が強いのです。「間違いなく〜してください」「〜し忘れてはいけません」「〜すべきです」というくらいのニュアンスです。このケースでも「確認する」と訳している例を時々みかけますが、それではヘンな日本語になってしまいます。

 

Please make sure you get to the station before 10:30.

CEOs need to make sure that every employee is happy to work. 

 

 で、一番目の用法は「確認する」という日本語がぴたりと一致するのでいいのですが、二番目の用法は、ちょうどぴたりと重なる日本語の言い方がないのです。

 

「間違いなく10時半までに駅に来るようにしてください」

 

でいいのですが、これではまるで遠足の引率をしている先生みたいですよね。

 たぶん英語ではこの日本語訳ほど強くて堅いニュアンスはないことが多いと思います。今のところ私はこのような訳し方をするしかないのですが、内心では(そこまでオーバーなニュアンスはないんだけどな・・・)という思いが残ってしまいます。

 どこかで見た訳で、

Please make sure you get ◯◯....

という英文を

「◯◯を確保してください」

と訳してあって、これは名訳だ!と感心したことがありました。

でも「確保」は何かを手に入れる話の時だけ使えるのであって、汎用性はないですよね。

 ということで、私はmake sureがでてくるといつも少し緊張してしまいます・・・